胸痛で来院した40代男性

胸痛で来院した40代男性

皆さん,こんにちは.YMC medicom です.

以前,私の外来に胸の痛みを訴える40代男性が受診されました.

主症状は胸の痛みですが,それは息を吸ったり吐いたりするとさらに痛くなるとのことでした.

最初は年齢も比較的若いので,心臓の病気というより肺の病気かな?と思いました.

それに,1週間前から風邪気味だったとの情報もあり,まずは肺炎とそれに伴う胸膜炎とかで痛みが出ているのかな? と思い,レントゲンを取りましたが,胸に水が溜まっているわけでもなく,明らかな肺炎もありません.

そのため,さらに心電図と採血検査を追加で行ったところ……

皆さん,この心電図どう思いますか? STが上がってるように見えますよね?

心筋梗塞じゃん!? と思ったかた,焦らずにじっくり・ゆっくり見てください.

確かに,STが上がってます.特にV3ーV6なんか顕著ですよね? でもそれだけではありません.実は I, II, III, aVf でもSTが上がってませんか?

広い範囲でSTが上がってます.実はこのようなSTの上がりかたは,あまり心筋梗塞の典型的なパターンではありません.でもこのような非典型的なST上昇を見かけた場合でも,必ず心筋梗塞は疑わなければなりません.

そこで登場するのは採血検査と心エコー検査です.

採血検査ではトロポニンTは陰性でした.(トロポニンTというのは急性心筋梗塞のときに上昇する採血マーカーです).さらに,CKの上昇もみとめませんでした.(CKとはクレアチンキナーゼのことで心筋梗塞のときに上がる酵素の一つです).

採血検査はあまり心筋梗塞ぽくありません.

さらに心エコーでは心筋梗塞の時に見られるような心臓の壁の動きの悪いところ(asynergy:アシナジー)も認めませんでした.ところが,心臓の周りに水が溜まってました.

さて,ここまでの情報から,もう皆さんもお分かりでしょうか?

そうです.この患者さんは「心膜炎」だったのです.

心膜炎の原因は多くの場合,先行するウィルス感染です.この患者さんも1週間前から風邪気味だったので当てはまりますね.

治療は安静と解熱鎮痛剤の内服で,多くの場合は数週間で改善していきます.

ただ注意が必要な場合もあります.まれに心膜炎の炎症が心臓の筋肉まで波及して「心筋炎」に発展してしまうケースがあります.心筋炎になるとやっかいで,重症化すると心不全になって一時的に補助循環装置が必要となることもあります.

そのため,心膜炎と診断した場合は,可能であれば入院させてあげて1週間くらいは経過観察した方が無難です.

ちなみになぜ心膜炎で心臓に水が貯まるかというと,心臓を覆っている膜(心外膜)に炎症が起こるからなのです.(下の絵を参考にしてください)

怪我した時に,傷口からじわーと透明な液体が出てくるのを見たことがある人も多いはずです.炎症が起こるとその周りに水が出てくるのです.(浸出液といいます.)心臓でも同じ現象がおこります.心臓の膜に炎症が起これば,その周りに水がでてきます.

今回は「心膜炎」の症例でした.病気は心電図1つでは診断できませんが,心電図がなければ診断にたどり着けません.

正確に心電図を読む力が必要です.心電図の所見入力や判読で困っている医療関係者の皆様,どうぞお気軽にYMC medicomにご用命ください.

何かの手助けになれれば幸いです.

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